エトノスシネマ

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2020.10.30

特集:仏教民俗フィールドノート     

半世紀におよぶフィールドワークで撮りためた貴重映像

本年度本田安次賞受賞(民俗芸能学会)の大著『民間念仏信仰の研究』(法蔵館)を出版した著者が、半世紀に及ぶ全国600カ所以上の民俗調査で撮影した映像から、日本各地の仏教民俗を取り上げたフィールドノート映像3作を公開します。すでに伝承者の絶えたもの、数十年のあいだにすっかり雰囲気を変えたもの、各地の行事を見比べると、日本人の死者と生者の交わりのかたちが輪郭をなしていきます。

(2020/11/10追記:3作品の解説レジュメPDFを関連資料に追加しました。日本映像民俗学の会での発表当時の解説に加筆訂正したものです。本ページ下部のリンクよりアクセスしてください。)

【撮影・報告】坂本要:1947年生。埼玉大学文化人類学卒業。東京教育大学大学院日本民俗学専攻。仏教民俗研究会主催。現筑波学院大学客員教授。映像活動:大学時、杉並シネクラブ。以降孝寿聡氏の博物館映像学研究所・西荻座禅会とともに活動する。

【フィールドノート】 『日本の送魂儀礼ー盆の送りー』(2017年/37分) 
【フィールドノート】 『沖縄八重山のアンガマー』(2017年/33分)
【フィールドノート】 『富士六斎祈祷念仏』(2019年/38分)

《特集:仏教民俗フィールドノート》 予告編

■『日本の送魂儀礼ー盆の送りー』

全国の念仏踊り、盆踊りを三部構成で紹介。
1、傘で送る。2、踊りで送る。3、念仏で送る。
一般に盆踊りを含む、念仏踊りは念仏を唱えながら踊ると考えられている。掛け声や合いの手に南無阿弥陀仏の唱えが入るものもあるが、多くの念仏踊りは念仏の唱え+踊りという構成になっていて、念仏を唱えて踊るものはない。念仏踊りは念仏に風流踊りが合わさったものといえる。風流踊りには風流傘が伴い、元来傘は依り代の意味を持っていたと考えられる。映像では傘に故人の遺品などを吊り下げて送っていく。これらの行事は念仏踊り・大念仏といわれ、始めに念仏が唱えられ,踊りがあり、傘の出る行列で送っていくという順になる。

■『沖縄八重山のアンガマー』

アンガマ―は旧7月13日~15日のソーロン(精霊祭―盆)に新仏の家に現れ供養をし、踊りと掛け合いの問答で新仏を楽しませる。傘や仮面で顔を隠し素顔が分からないようにする。あの世から来たもので声は裏声を使う。祖霊ともされるが精霊ともとれる。アンガマーの語源については母や姉を指すとされる。他に家の萱上げや節祭にも踊られ、巻き踊りの事をアンガーともいう。これは本土の女性の風流踊りに通ずるともされている。

■『富士六斎祈祷念仏』

山梨県・静岡県・神奈川県の富士山山麓周辺には念仏と修験道儀礼が習合した祈祷念仏が三十か所以上散在する。山中湖平野の事例は昭和5年雑誌『民俗芸術』に報告され、この念仏が六斎念仏の統括寺院である京都干菜寺(光福寺)の宝暦5年(1755)の村方控牒に載っていることから六斎念仏とされた。この念仏は「山」とか「くもの巣」といって注連や切紙を天井一面に飾り、最後にこれを切り落とす。これらは修験道儀礼を取り入れた念仏行事であるが、根底は融通念仏である。融通念仏は百万遍数珠繰りや六斎念仏になっていく。
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