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2022.07.29

宮本馨太郎フィルム(1) 特集:民具・服飾

文化財保護・博物館行政に尽力し、民具研究に従事した宮本馨太郎。仏製の9.5ミリカメラ、パテーベビーで現地調査を撮影し、作品化した映像民俗学者のパイオニアでもあります。
彼の作品を、いくつかのテーマに沿って取り上げます。
第1回のテーマは『民具・服飾』。馨太郎の初期の作品には、彼と同じく民具、服飾などの現地調査に邁進した父、勢助の姿を捉えたものもあります。民具研究資料としてだけでなく、映像作品としても巧みな構成の『うちわの出来るまで』に加え、父、勢助の服飾調査に同行し撮影した『奥利根の流れ』『片品川に沿うて』の2作品を紹介します。

内田順子氏(国立歴史民俗博物館)による解説テキストを本ページ下部に付録

『うちはの出来るまで』(1930年/12分/モノクロ・サイレント/4:3)

うちわの製作過程を記録した映画を兄が弟に見せるシーンから始まる、馨太郎作品でも斬新な構成。うちわ作りの行程は、千葉県・千倉町のうちわ屋で撮影された。職人の全体の動きと、手元のアップをバランスよく撮影し、製作の行程を分かりやすく映し出す。
参考資料:パテーシネSep.1931_Vol.4No.9
東京ドキュメンタリー映画祭2021・特別上映『至極の美術工芸』作品
『うちはの出来るまで』

『奥利根の流れ』(1930年/15分/モノクロ・サイレント/4:3)

馨太郎の父、勢助の服飾調査に同行し、撮影した作品。冒頭に手書きの地図を盛り込むなど、地理風俗資料としても意識されている。水上村の全景、自然環境、服飾、村の日常生活(洗濯や畑仕事)など、民俗的な視点が折々に見られる。後半に撮影された一部の地域は、のちに藤原ダムにより水没した地域であり、その意味でも貴重な資料である。
『奥利根の流れ』

『片品川に沿うて』(1930年/14分/モノクロ・サイレント/4:3)

『奥利根の流れ』同様、馨太郎の父、勢助の服飾調査に同行し、片品川のほとりを訪ね歩いたときの記録。フンゴミ(山袴)、ジュウロウタ(物を背負う際に背中にあてるもの)、ウソグツ(ワラジの上に履くもの)などに出会う。服飾だけでなく、川沿いの絶景や、村落での人々の暮らし、家屋なども詳細に記録している。
参考資料:「泥足の跡」第2輯(立教大学 泥足の跡社)
『片品川に沿うて』
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