松村圭一郎作品集 ethnographic home video
世界を理解するために、言葉をつづり、概念を紡ぐことで探索してきた人類学者にとって、映像で表現することにはどんな意味があるのでしょう。本を書くことや、論文を執筆することとどのように異なるのでしょうか。『うしろめたさの人類学』(ミシマ社)などの著書で知られる文化人類学者の松村圭一郎は、長年フィールドワークを行うエチオピアで、ある時からビデオカメラを用いるようになりました。
特集【松村圭一郎作品集 ethnographic home video】では、松村がカメラを構えてフィールドに向き直し撮り留めた2作品をお送りします。
▶︎『マッガビット~雨を待つ季節~』
1998年から通い続けてきたエチオピアのコーヒー栽培農村。2008年3月、はじめて2週間のビデオ撮影を行った。エチオピア暦のマッガビット月(3月頃)は、長い乾季の終りにあたる。人びとはみな雨が降りはじめるのを待っている。村の男たちは雨乞いの祈りを捧げながら、空を眺める。雨が降らなければ、土地を耕して種を蒔くこともできない。ちょうど村の女性たちが中東へ出稼ぎに行こうとしていた。突然の出稼ぎブームだった。その多くは2~3年の契約で家政婦として働く。仲介業者を通して首都に行き、滞在しながらパスポートやビザの申請をし、健康診断を受ける。その渡航の準備だけでお金がかかる。多くの家族は借金を負う。村に戻り、業者からのビザが下りたという連絡を不安げに待つ女性たち。どこの国に渡航することになるのか、いったいそこがどんな国なのか、女性たちは何も知らない。いったい彼女たちはどんな未来を待ちわびているのか。
(2016年/2008年撮影/28分/HD/16:9)
【撮影・編集】松村圭一郎
東京ドキュメンタリー映画祭2018・短編部門上映作品
▶︎『アッバ・オリの一日』
エチオピア西南部のコーヒー栽培が盛んなコンバ村。1998年から現地調査でお世話になってきたアッバ・オリは、84歳(2019年2月撮影時点)。いまや村で最長老だ。数年前から足を悪くし、出歩けなくなった。75歳の妻ファトマとともに、病気がちで床に伏せることも多い。裏庭のバナナの下で用を足し、軒下の長椅子に座り、居間でコーヒーを飲み、礼拝をする。単調な時間が過ぎていくだけなのに、アッバ・オリは孤独でも、退屈そうでもない。半径5メートルの暮らしに、子どもや孫、友人たちが訪ねてくる。サルも、虫も、風も、やってくる。さまざまな生命に囲まれた時間。そんなアッバ・オリの過ごす一日をとおして、エチオピアの村の老いの風景をとらえる。人と人とがどう関わって生きていくのか? そんな問いを考えるために。
(2020年/2019年撮影/36分/HD/16:9)
【撮影・編集】松村圭一郎
【編集協力】岡本和樹
東京ドキュメンタリー映画祭2020 特集「映像の民族誌」上映作品
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監督名松村圭一郎
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ジャンル居住, 衣服, 食習, 農業, 労働, 婚姻, 年齢, 年中行事, 民謡, 信仰, 呪術,
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尺64(28, 36)
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レンタル価格990
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制作年2016, 2020
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撮影年2008, 2019
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スタッフ・
キャスト情報『マッガビット~雨を待つ季節~』
【撮影・編集】松村圭一郎
『アッバ・オリの一日』
【撮影・編集】松村圭一郎
【編集協力】岡本和樹 -
地域エチオピア・ジンマ県
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コピーライト(C)松村圭一郎
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動画URL